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『 スロープってさ、じれったいんだよね 』

沢田マンションにスロープがあることを友人に話したところ、こんな返事が返ってきた。

・・・そう、スロープはじれったい。
駅や公共施設などにあるスロープは、同じ場所に階段で行くの比べ妙にまどろっこしい。

難しい事はわからないが、健常者がきっと便利であろうと想像する、障がい者のためのバリアフリーを健常者が歩くからなのか。

一日に何度もこのスロープを上り下りすると、妙な事に気がつく。
それはいつの間にか3階にいて、いつの間にか4階の自室にいたりする、昇降をまったく意識しない不思議な感覚だ。

後にご紹介するが、この集合住宅には上下という感覚が異様に希薄な気がする。いや、住んでいる人たちにとって、明らかに希薄であるはずだ。

ちょっと想像してもらえばわかることだが、今時、5〜6階建てで、エレベーター無しの住宅というのはかなり不便なのだ。
不便以前に退屈この上ない。私自身、無機質な階段で5階まで上って暮らした経験から容易にそれは想像がつく。

ここでの上下は、町の路地を右に曲がる、あるいは左に曲がるといった感覚が上下でしかない。

その秘密はいくつかあると思う。
私が気がついた範囲で この後ご紹介もするが、まず気がついたことは、ご覧のように言葉は悪いが、ある意味 意識的に造られただろう スロープの“イビツ”さによるところが大きいのではないか?ということだ。